TENEBRAE 連載コラム
COLUMN

『シナリオ担当I川のホラーよもやま話』Vol.8
「オススメ映画紹介その2『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』

どうも。シナリオ担当I川であります。
前回の冒頭では『まだまだ暑い日も』、なんて言ってましたが、
気がつくといつの間にか、本格的に秋っぽい気候になってきましたね。
たった2週間ですが、一気に季節が進んだようです。
まあ、残暑が長かった分、変化が早いのかもしれませんね。

さて、今回はオススメ映画紹介第2回。
1999年のアメリカ映画、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のお話です。

1994年10月、映画学校に通う生徒
ヘザー・ドナヒュー、ジョシュア・レナード、マイケル・ウィリアムズの3人は
伝説の魔女『ブレア・ウィッチ』に関するドキュメンタリー映画の撮影のため、
メリーランド州バーキッツビルにある森へと向かい、そのまま行方不明となってしまう。
彼らが失踪してから1年後、森から彼らの遺したフィルムとビデオが発見される……。

映画はその発見されたフィルムやビデオを編集して作られた、という設定で進行します。
森の中で3人が遭遇する不可解な出来事の数々。
やがて、ジョシュアが姿を消し、夜中に聞こえてきた彼の声を追うヘザーとマイケル。
二人が行き着いた先で目撃したものとは一体……?

ホラーファンでなくとも、映画ファンの方ならご存知の方も多いかと思うこの作品。
擬似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)や出演者の持つカメラで撮影された
主観視点の映像(POV)と言った手法で話題となり、後のホラー映画に大きな影響を与えました。
『クローバーフィールド/HAKAISHA』や『パラノーマル・アクティビティ』等が有名ですね。
そんな作品ではありますが、決して良い評価を受けているわけではないことも事実です。

正直言ってしまいますと、実はこの映画、映画作品単体として観た場合は
確かに名作や傑作と呼ぶには、難があると言わざるを得ません。
なんでも、決まった脚本は一切なく、俳優たちの演技は全てアドリブ、スタッフたちが
色々な仕掛けで彼らを驚かし、そのリアクションだけを撮影したのだとか。
ストーリーらしいものは殆どなく、ただ、身の回りで起こる不気味な現象に恐れおののく
俳優たちの反応、その映像だけを集めて編集したわけですから、致し方ないとも言えるのですが。

ではなぜ、そんな映画が世界規模の大ヒット映画足り得たのか?
その理由は、徹底したメディアミックス展開を図ったことにあると言えるでしょう。
インターネットのウェブサイトを筆頭に、出版物やテレビ番組で、あたかも失踪事件が
実際に起きたかのような擬似ドキュメンタリー物が次々と制作され、それによってこの映画は
大きな知名度を獲得したと言えます。それらのウェブサイトや番組等が、事件の歴史的背景
(ブレア・ウィッチの伝説や地元で起きた不気味な殺人事件の話など)を伝えることで、
人々に事件に関する情報を過剰なほど提供したのが、好奇心旺盛なホラーやオカルトファンの
知的好奇心をくすぐったことが成功につながったのでしょうね。

……え?
それじゃあ、おまえがいつも言ってる『意味の喪失』とは真逆の手法で成功したんじゃないのか?
皆さん、多分そう仰りたいのではないでしょうか?

……実はそうじゃないんですねぇ、これが。

確かに、メディアミックスによって映画には収まりきらない大量の情報が提供はされましたが、
実はその情報には肝心の失踪事件そのものに関するものは殆ど含まれていなかったのです。
メディアミックスで展開されたのは、先にも書きました通り、失踪事件の起きた森や、周辺の
土地に関する情報がその殆どであり、失踪した3人がなぜ、どうして失踪したのか、
それを具体的かつ客観的に示唆する情報はまず含まれていなかったのです。
真相につながる情報の隠蔽は映画本編でも徹底しており、3人が巻き込まれる不可思議な
現象の理由や原因につながるような情報や映像は一切含まれていません。

観客はこの不気味な事件の真相を知ろうと、サイトや出版物を漁って知識を得ようと
しますが、事件の真相に関する知識を得ることができず、逆に『意味の喪失』を強く
体験することになる……それこそが、この作品に仕組まれた恐怖のギミックだったのです。
映画本編はあくまで『ブレア・ウィッチ』の世界の一角であり、メディアミックスによって
構築された、映画の枠を越えた恐怖体験の世界、それこそが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と
言うことができるでしょう。

映画の公開から10年以上の歳月が流れ、残念ながら当時作られたウェブサイトを
見ることはできませんが、出版物に関してはそのいくつかが入手可能なようです。
皆さんも興味がございましたら、擬似ドキュメンタリーの恐怖の世界を体験してみては
いかがでしょうか……?

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