TENEBRAE 連載コラム
COLUMN

『シナリオ担当I川のホラーよもやま話』Vol.4
「オススメ映画紹介その1『ジェイコブズ・ラダー』」

どうも、夏バテ気味のシナリオ担当、I川です。
いやあ、前回は酷い目に会いました。
深夜の来訪者、玄関を開けたI川がその目にしたものは……。
……おっと、危ない危ない。これ以上語ることは……。

……げふん、げふん。
まあ、そんなわけで気を取り直しまして、今回のお題と参りましょう。
題して【オススメ映画紹介その1 『ジェイコブズ・ラダー』】です。

ホラー映画といいましても、ゾンビ物からスプラッターまで、 数多のジャンルがあり、そして数多くの有名作品が存在します。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や『エクソシスト』、 『13日の金曜日』や『リング』……。
そういった、ホラーの代表格とも言える有名タイトルに比べると、 今回ご紹介致します『ジェイコブズ・ラダー』は 決して知名度が高いと言える作品ではありません。
しかし、この作品、知る人ぞ知る名作とも言えるタイトルなのであります。
ホラーゲームファンの皆さんなら、かの『サイレントヒル』シリーズに 多大な影響を与えた映画としてご存知の方も多いかもしれません。

舞台は1970年代。ベトナム帰還兵のジェイコブは 恋人と同棲しながら郵便局員として働いていました。
しかしやがて、彼の身の回りに奇妙な出来事が起こるようになります。
悪夢に苦しめられる夜が続いていたある日、 彼の目の前にベトナム時代の戦友、ポールが姿を現します。
ポールはベトナムからの帰還からこの方、何者かに追われていると訴えます。
ジェイコブは戦場で起きた出来事を思い出し、 軍が何かを隠蔽していると疑うようになるのですが……。

日常を侵食するようにジェイコブの身の回りで起こる奇怪な出来事、 特にクライマックスで、負傷したジェイコブが運び込まれた病院で目撃する、 グロテスクで恐ろしい光景の数々は、正にサイレントヒルに受け継がれることになる 鮮烈なイメージを観るものの脳裏に焼き付けます。

ベトナム戦争を背景にしたこの映画は反戦テーマの作品として語られることも多いのですが、 実は更にその背景には、欧米人=キリスト教徒とは切っても切れないもうひとつのテーマがあります。
それは旧約聖書に描かれた死生観……この映画の主人公、ジェイコブの名前をヘブライ語読みにすると ヤコブとなり、タイトルにある「ラダー」とはハシゴのこと。
つまりこの映画は旧約聖書に描かれた『ヤコブの梯子』の逸話をベースにしている作品なのです。

映画に限らず、欧米のエンターテイメント作品の多くが聖書やその逸話をモティーフ、 あるいはテーマとして扱っています。
映画『セブン』や『プライベートライアン』、
ハーマン・メルヴィルの長編小説を原作とする『白鯨』……。
数え上げれば枚挙に暇がありません。
世界名作劇場のアニメでお馴染みの『フランダースの犬』や『アルプスの少女ハイジ』も、 その原作は色濃く聖書や宗教の影響が伺える作品です。
『ジェイコブズ・ラダー』もまた、こうした数多くの聖書を下敷きとした作品のひとつです。

映画のクライマックス、主人公の前に現れた彼の息子『ゲイブ』。
聖書に慣れ親しんだ欧米人であれば、その少年の名前が天使ガブリエルの 英語読みから来ていることに気づくでしょう。
そして、その息子に誘われたジェイコブが階段を昇っていくシーン……。
観客は、その意味に気付かされる仕組みになっているのです。

我々日本人にとって聖書はあまり親しみのあるものではありませんし、 それゆえに作品を鑑賞する姿勢は違って当然です。
そして、聖書を下敷きにした作品であるからといって、 必ず聖書の知識を持って鑑賞しなければいけないものではありません。
ですが、ある程度下地となる知識を持って鑑賞すれば、 同じ作品に対する印象や感想も大きく変わってくることもあるかもしれません。
そんな映画の鑑賞法もなかなか楽しいものかもしれませんね。
『ジェイコブズ・ラダー』は見方を変えて何度も楽しめる、そんな贅沢な映画でもあるのです。

主人公ジェイコブを『ショーシャンクの空に』や『ミスティック・リバー』のティム・ロビンス、 その息子ゲイブ役は『ホーム・アローン』でブレイクする前のマコーレー・カルキンが演じています。
1990年のアメリカ映画です。
興味をお持ちになりましたら、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?

さて、次回は……TENEBRAE第1巻発売直前スペシャルと題しまして、 私こと、シナリオ担当I川が特に影響を受けたホラーゲームや映画などを紹介してみたいと思います。
それでは、また……!!

PAGE TOP