TENEBRAE 連載コラム
COLUMN

『シナリオ担当I川のホラーよもやま話』Vol.3
「ネットロアとホラーの関係」

ども、シナリオ担当I川でございます。
気がつくと7月も半ば、暑さもいよいよ本格的になって参りました。
ところで広報担当Sさん、日本ではホラーのシーズンは夏ということになっていますが、 欧米ではそうでもないって話、ご存知でしょうか? 
むしろ冬の方がシーズンだという話もあります。

今年の冬はこたつでミカン戴きながらホラー映画なんて、いかがでしょうか?
……ちょっと季節はずれの話になってしまいました。


さて、気持ちを切り替えて今回のお題と参りましょう。
皆さんは『ネットロア』という言葉をご存知でしょうか?
『ネット』とは勿論、インターネットのこと、そしてロアは『フォークロア』のロア。
『フォークロア』というのは民話のこと、つまり『ネットロア』とは、インターネットで発生した民話、という意味です。
まあ、ぶっちゃけて言ってしまえば噂話のことです。
現代の主に都市部において発生し伝播していく民話的な噂話を『都市伝説』と呼びますが、そのネット版ですね。

いわゆる都市伝説のヴァリエーションが多岐に渡るように、ネットロアもまた、数多のヴァリエーションが 存在しますが、ホラー系……いわゆる『怖い話』が多いという点では共通しています。
そして興味深いことに、そうした恐怖系ネットロアにも、前回お話ししました”意味の喪失”の構造が見られるのです。

例えば、有名な恐怖系ネットロアのひとつに『くねくね』と呼ばれるものがあります。
『くねくね』と呼ばれる正体不明の存在にまつわる話で、数多くのヴァリエーションがありますが、 概ね共通している内容として、次のようなものが上げられます。

・色は大体白である。稀に黒いケースもある。
・遠くにいて、文字通りくねくねと体を動かしている。
・形は人間に似ているとも言われるが、はっきりしない。
・水辺での目撃例が多い。
・遠目で見る分には害はないが、双眼鏡などで見つめて、それが何かを理解してしまうと精神に異常をきたしてまう。

『くねくね』のストーリーにおいて、それが何かを理解してしまう=精神に異常をきたしてしまうのは 殆どの場合、主人公=語り部ではなく、その兄弟や友人です。
つまり、物語を語っている当人自身はくねくねを理解することがない=くねくねの意味を知ることはありません。
言い換えるなら、語り部である主人公にとっての『くねくね』の意味は予め喪失されており、 ただその結果としての怪異現象(兄弟や友人が精神に異常をきたす)だけが目撃されることによって、 恐怖の存在としての「くねくね」は確立されている、とも言えるのです。
「くねくね」の正体が何であるのか、それははっきり言ってしまえば大して重要なことではありません。
この物語の恐怖のポイントは、「くねくね」が理解されない……
すなわち、その存在が意味を持たないこと、その一点につきると言っても過言ではないでしょう。

『NNN臨時放送』と呼ばれるネットロアもあります。
深夜、放送を終了したテレビチャンネルで突然『NNN臨時放送』というテロップと共に始まる不可解な番組。
悲しげなBGMと何処かのゴミ処理場のような背景をバックに人の名前と年齢と思われる数字がスクロールしていき、
最後に「明日の犠牲者はこの方々です。おやすみなさい」と表示される……。
数年前、この噂を再現するFLASHムービーが制作され有名になった話です。

放送終了後のテレビで流れるという不可解な番組であり、その内容も意味不明と、 不気味な要素を多分に含むこの話ですが、結局その人名のリストと思しきものが一体何なのか、 そして最後に表示される「明日の犠牲者はこの方々です」という文言の意味するのか、 それについては一切語られません。
『NNN臨時放送』もまた、予めその意味を喪失していることによって成立しているのです。
正に、そのことこそがこの不可解な番組を恐ろしいものと認識させる理由なのです。

『くねくね』や『NNN臨時放送』と言った文言をネット検索してみると分かりますが、 多くの人達がそのネットロアの説明や解釈を試みています。
例えば、『くねくね』は自分自身のドッペルゲンガー(自分そっくりなもう一人の自分)であるとか、 『NNN臨時放送』は、NHKの受信料未払い者のリストが誤って放送されてしまったものだ……等。
それは説明や解釈をすることにより、ネットロアの恐怖の源泉である”意味の喪失”を無効化しようとする 試みに他ならないと、言えるのではないでしょうか……?

※『NNN臨時放送』をYoutubeやニコニコ動画で検索すると多数の動画が見つかりますが、  いわゆるビックリ系の悪質な動画も多く含まれています。閲覧には十分ご注意ください。

さて、次回はこれまでとは少し趣向を変え、筆者の好きなホラー映画を紹介したいと思います。
題して『オススメホラー映画紹介』。1回目はあの傑作ホラーゲーム、 『サイレントヒル』の元ネタのひとつとしても有名な作品、 『ジェイコブス・ラダー』を取り上げたいと思います。

それでは、次回をお楽しみに!!





……ところで皆さん。
『鮫島事件』って、ご存知でしょうか?
実はその真相について重要な情報を……おや、こんな時間に誰か来たようだ。

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